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button-only@2x 指を使うーーー経験則が証明する定番のやり方

手先を使う人はボケないといわれる。

ピアニスト、ギタリスト。パソコンを打つオペレーターや作家。こまかい指の作業が必要な職人。たしかに思い当たる。

クルミをふたつの掌の中でもむように動かす健康法を行う人をときに見かけるが、これなども、脳内出血などで体が麻痺した人のリハビリテーションにも、よく用いられている。

ボケないばかりではない。指の運動は即、脳の活性化につながるとされる。

手の各指に対応する脳の場所は、大脳の運動野の上に順番にきれいに並んでいつ。指に単純な動きをされると、対応する運動野が活動するだけである。

ところが、複雑に動かすと、運動野のみならず、まわりの脳の部分もはたらきだすという。たとえば、運動の順序を制御する補足運動野や、空間的な運動を行わせる運動前野などである。

ただ、これ以上の脳生理学的な解明は、まだ決定的なものがない。

だから、手先を使うと脳によいというのは、まだ経験則の範疇に入る。

その経験則としてきわめて効果的なのが、指回しなのである。

なぜ「人間関係」まで好転するのか

指回し運動の提唱者は、東京大学医学部付属病院内科の栗田昌裕医師だ。やり方はいたって簡単である。

両手の指を少しきつめに合わせ、ドーム状の形をつくる。

そして、親指から小指に向かって順番に回していくのだ。

右の指は時計回りに、左指はその逆に回す、なるべく右と左と左の指がふれないように、グルグルとただ回すだけである。

親指、人さし指…と順番に各10回ずつ回し、慣れたら逆回転もやってみるといい。

中柚木、薬指、小指あたりがなかなか難しい。はじめは、ゆっくりでもいいだろう。

意外なことに栗田医師は、この指回し運動を速読術に応用したという。栗田医師は、指回し運動と速読を組み合わせた研修を各地で実施しているが、たとえば一回2時間の研修10日間受ける、つまり計20時間の訓練をすると、それだけで、本を読む速さが平均10倍、人によっては28倍にも向上するというのである。

速読といっても、その内容はピンからキリまであろうが、少なくとも指回し運動が、ある種の脳力アップにつながるとは、いえるようだ。

この刺激法は、会社の机の下などで、いつでもどこでも、だれにでもできるところがすぐれている。

ちなみに、指回し運動をしている最中の被験者を調べてみると、心電図は被験者を調べてみると、心電図は波が小刻みになり、変動が少なくなる。そして脳波がアルファ波になってくるという。

そして、指回し運動を続けるにしたがって、首のつけ根や顔面の血液が少しづつ増加するということもわかっている。

かなり複雑な運動ゆえに、運動野、補足運動野、運動前野が活発に働き、その働きを支えるために、大量の血液が動員されるのであろう。

血液が集まってくれば、当然、他の脳の働きも活発になるのである。

アルファ波になっていることは、ひらめきや集中力が生まれてくることにつながる。

仕事の企画やアイデアがほしいとき、集中したいとき、人間関係の難問にぶつかったときなどに活躍できるかもしれない。

指回しは脳の興奮と抑制という面からも考えられる。一つ作業に集中すると、脳の特定の部位が興奮し、疲労してくる。これを回復させるには、脳の別の部位を興奮させて、疲れた部位がなお働こうとするのを抑制するのがいい。

たとえばデスクワークで疲れたときは、運動野を興奮させてやり、思考や言語、数字を扱う部位を抑制、リラックスさせるわけだ。

指回しは、このしくみを動かすのに適度な「運動」というわけである。