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button-only@2x 頭をよくする「最強の物質」は、ここにあった(酸化食)

button-only@2x 頭をよくする「最強の物質」は、ここにあった(還元食)

かつて「頭がよくなる食べ物」として、グルタミン酸や核酸がもてはやされた時期があった。しかし、どうやら真実味が薄いことがわかってきて、その反動か、今では「頭のよくなる食べものなどありえない」という学者も多いようだ。

しかし、それはちょっと、性急な判断といえまいか。当時はまだ脳の研究は、現在に比べて未知な部分が多かったからである。

脳に関する研究は、ここ数年で飛躍的に進んだ。脳内の機能がかなりわかるようになった今では、頭をよくする食事についても、新展開があって当然である。

いうまでもなく、人間は食物や水を外界から摂取して機能、生存している。だが、何でも体に取り込めばいいわけではない。体全体、あるいはそれぞれの臓器が欲し、とくに必要としている栄養素が必ずあるものだ。

脳もその例外ではない。そう考えてくると、脳の機能や働きをとりわけ促進する物質や食物があると考えられるのである。

これまでの栄養学は、とかくカロリー計算や脂肪・タンパク質・炭水化物・ビタミンなどの分量計算に偏ってきてと思う。

これは、戦後の食料の乏しい時代に生まれた栄養学の延長であって、現在的とはいえまい。

現代の栄養学は、体の機能を把握し、食物の特性をしっかり理解し、その上で食生活の体系を考えだすためにあるはずである。事実、そういう動きは活発化しており、その方面からも、「脳にいい食物、食生活」が報告されているのである。

DHAが「知能」にもたらす驚くべき効果

数年前、DHA(ドコサヘキサエン酸)が頭をよくする食べ物としてブームを呼んだ。

ブームのきっかけは、イギリスの脳栄養科学研究所のマイケル・クロフォード教授の発表である。

「日本人の子どもの知能指数が高いのは、魚をたくさん食べているからだ」「魚に含まれているDHAが頭の働きをよくする」という彼の報告は、日本人には非常にうれしいものである。

だからというわけではあるまいが、クロフォード教授の発表を実験的に証明したのは日本人だった。名古屋市立大学薬学部の奥山治美教授である。

奥山教授が行ったネズミの実験は、おおよそ次のようなものだったアルファリノレンさんを多く含むシソ油の餌で育てたネズミ群と、アルファリノレン酸はほとんどなくてリノール酸を多く含む紅花(べにばな)油の餌で育てたネズミ群とをつくる。そして、室内が明るいときにレバーを押すと餌が出てくるが、暗いときは押しても出ないしくみの実験装置を設置して、「明るいときは出る、暗いと出ない」ということを学習する能力を、二つの群で比較してみたのである。

すると、アルファリノレン酸を大量に含んだ餌で育てたネズミは、そうでないネズミに比べて、学習能力がいちように高くなったという。そして、アルファリノレン酸とは、体内でDHAに変化する物質なのである。

  食べ方ひとつで「作用はゼロ」にもなる

DHAとアルファリノレン酸は、ともに脂肪酸の一種である。脂肪酸には、動物性脂肪、リノール酸、アルファリノレン酸の3つがある。このうちリノール酸とアルファリノレン酸は、体内で合成する事ができない。

どうしても食べ物として摂取する必要がでてくる。そして、食べることで体内に取り入れられたアルファリノレン酸が合成されて、DHAになるというわけだ。

DHAはおもに肝臓で合成されるが、脳のグリア細胞でも合成されることが最近、実証されている。

このDHAや、その素となるアルファリノレン酸、どういうわけか、低温の海に住む魚の油と冬野菜とに多く含まれている。

魚の中でもとくにDHAの量が多いのは、マグロ、サバ、サンマ、ウナギ、イワシなどだ。わけてもマグロの脂身には飛び抜けて大量に含有されている。しかもこれらの魚は、心臓病や脳梗塞を予防するとされるEPA(エイコサペンタエン酸)もたっぷりと含んでいるのである。脳にも体にもよい食品なわけだ。

ただ、食べるときには、「食物油で揚げると効果がなくなる」という一点を覚えていただきたい。というのは、食物油に多く含まれるリノール酸は、アルファリノレン酸と体内競合関係であって、その左右を抑えてしまうからだ。

しかも、シソ油とゴマ油以外のほとんど食用油にはリノール酸が多いのである。

もう一つのアルファリノレン酸含有食品の冬野菜では、ホウレン草、春菊、白菜、大根、カブラなどがいい。

逆に、夏野菜であるニンジン、キュウリ、那須、トマト、ピーマンなどは、アルファリノレン酸よりも、その働きを阻害するリノール酸の含有量が多い。

「海馬のシナプス小胞」が高密度化する

さらに、アルファリノレン酸の効果を強力に立証する研究発表が、つい最近の国際学会で発表された。大分医科大学の竹下正純教授、吉田敏助教授らの研究である。

それによると、記憶を支払い海馬という脳の部分に、摂取する食食物の違いによって、形態的変化がもたらされる、というのだ。

脳の中を情報が流れるしくみを思い出してほしい。脳のニューロン(神経細胞)の接合部分であるシナプスの先端に、シナプス小胞と呼ばれるものがあり、ここから神経伝達物質が放出され、情報が流れるというシステムだった。

竹下教授ら実験によると、食事によって、記憶の働きを司る海馬のシナプス小胞に変化が見られたというのである。つまり、アルファリノレン酸のが豊富なシソ油を食べたネズミのほうが、リノール酸を多く含む紅花油を食べたネズミに比べて、シナプス小胞の密度が高かったというのだ。

シナプス小胞が高密度なほうが、当然、情報伝達能力が高い。

とくに海馬は記憶を司る部分であるから、記憶力や学習能力の向上には、アルファリノレン酸が大きな効果を与えていると予想されるのである。

まだ人体への実験、調査はほとんどないから、「夢の記憶物質」みたいに過度な期待を寄せるのは早計かもしれない。

だが、可能性ということでいえば、かなり高いようだ。少なくとも、ゴマ油と紅花油で揚げたフライを選べるときには、前者を食べるほうが、脳のためにはいいといえるかもしれない。

  頭を悪くする食品、それを修復する食品

「近ごろの若い者は・・・」という嘆きは、古代エジプト落書きにもあったというほど、昔から繰り返されるぐちである。

そうはいっても、最近の若者や子どもの行動は私から見ても、ときに目にあまる。

いつもいらいらしている。根気がない。すぐに怒り出す。大学などでも授業中に教室で奇声を発したり、平気で私語を交わしている。私も10年前までW大学の文学部の講師をしていたから、教室からふらふらと出ていったり、スーッと入ってくる学生が少なからずいたことを実感している。しかも彼らには罪の意識がまったくないようなのだ。

昔にはあまりないことだった。

いらいらや短期がはなはだしくなると、他人に危害を及ぼす。このところ問題になっているイジメ行動も、そうした不安定な精神状態の表れだろうといいたくなる。

こうした問題行動は、食生活に起因するのではないかという議論が高い。食生活と問題行動の関連性を調査した興味深いデータがある。福山市立女子短期大学の鈴木雅子教授の研究だ。

  脳を「酸素不足」陥れる酸化食品とは

鈴木教授は、福山市内の中学生男女1169人アンケートを行ない、食生活のよい順に五つの群に分けて、心の健康状態について調査をした。それによると、食生活と精神状態とには、、明らかな芯が関係が認められたという。

とくに食生活の悪い群れは、「毎日なにかしら腹がたっている」といっていたらしい。

極端な例では、菓子パンとコーラ、カップラーメンとキャンディなどが主食のようになっていた14歳の中学生の行動がある。学校の机をカッターナイフで削る、校舎の屋上から水やつばを落とす、授業中に寄生を発するかと思えばすぐに教室を抜け出し、しばしば頭痛、吐き気を訴えたという。

ある高校のラグビー部員に脚気の症状が多発した。昔ならいざ知らず、今の日本に脚気などありえないのにだ。調べてみると、彼らは練習が終わったあと、近所の売店で菓子パンやコーラをむさぼり食い、帰宅したときは、満腹なので、母親のつくった夕食に手をつけなかったという。この結果ビタミンB不足の症状を起こしたわけだった。

これだけ豊かな日本にいながら、若い人の食生活は逆に貧困化しているようだ。

スナック菓子、清涼飲料水、ファーストフードは、たまにならいいのだが、常食するものではあるまい。これらの食品は、カロリーは高いが、栄養のバランスにはなはだしく欠ける。ビタミンやミネラルは微量で、体にも脳にもいいとはいえない。

脳にとって、さらに怖い食品がある。

フライドチキンやフライドポテト、インスタントラーメン、てんぷら、肉の脂などの、高いカロリー食品での油の入っているものだ。これらは、典型的な酸化食品である。

酸化食品というのは、過酸化脂質を多く含む食品のことだ。

脳の血管壁にはリノール酸が多いのだが、そのリノール酸はラディカル反応といわれる酸化反応を起こし、その二重結合がはがれてしまうのだ。

つまり、脳の血管壁が弱くなり、脳細胞への酸素や栄養の補給力が低下するわけだ。この酸化が著しく進むとボケを促進し、痴呆症が進むというわけなのだ。

還元ーーーなぜ緑黄色野菜は脳にもいいのか

しかし、よくしたもので、こうした酸化を防ぐ力のある食品も少なくない。それが還元食品を代表するものに、緑黄色野菜、豆や玄米などの穀類がある。これら還元食の中には、カロチンやSOD酵素と呼ばれる還元酵素が多く含まれていて、これが体内脳の酸化を還元する。

還元食をたくさん食べると、酸化反応が起こりにくく、脳内の血管もつねに、フル稼働できるというわけだ。

ひと昔、ふた昔まえまでの日本食は穀類と野菜が主だったから、非常に脳によかったわけである。

朝は玄米と味噌汁とたくあん。肉類など脂っこいものは、今までと比べると格段に少ない。常食する味噌汁も納豆も豆腐も、みな大豆からつくられているわけだから、日本食はまさに健脳食といいっていい。

話がそれるが、私は豆腐が大好物である。先ごろは、『豆腐の如く』という本を出したくらいだ。

もし、死ぬまぎわに希望の食事をあげろといわれれば、私は豆腐と答えるに違いない。敗戦間近のころ、私は軍医として国府台(千葉県市川市)の陸軍病院にいた。さすがの、陸軍病院もしだいに食料が底をつき、配給の大豆を、軍医も患者も衛生兵もポリポリやっていた。

ところがある下士官がアイデアを出し、自家製豆腐をつくることになった。徴用(ちょうよう)で店主を取られて休業状態になっていた町の豆腐屋から器具一式を借りてきたのだが、完成した豆腐を一口食べた私は、感きわまって茫然自失した。

明日の命もわからない時代のことである。これが最後に食う豆腐かもしれない。そういうことも手伝って感動したのかもしれないが、「世の中にこんなうまいものが存在したのか!」と思ったものだ。

戦前の日本は、貧しく粗食ではあったけれど、脳や健康のことを考えれば、きわめてすぐれた食生活だったと思うのである。