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button-only@2x 「考えたら行動する」自分の作り方

脳を右と左、前とうしろから眺めてみた。こんどは内側と外側の違いを見よう。脳のいちばん外側は、大脳新皮質と呼ばれている。いくつものしわが刻まれ、いくえにも折りたたまれている。このしわを伸ばすと新聞紙大にもなるという。

頭蓋骨におさまっている脳の中に、刺激によって、ネットワークをつくる約140億もの神経細胞が、ぎっしり詰まっており、さらに、この左側が論理的な思考を担い、右側が空間的、感覚的な認識を行っている。

大脳新皮質が意欲の脳を「包み込んでいる」

ここで、右脳と左脳をつないでいる脳梁の部分で脳を垂直に切り離したと仮定しよう。すると、やや灰色がかかった大脳新皮質よりも白っぽい大脳辺縁系があらわれる。大脳新皮質は大脳辺縁系をすっぽりと包み込む形になっている。

カサの小さなキノコが大きなベレー帽をかぶっているようなイメージである。

じつは、この構造こそ、生物の進化の道程を物語っているのである。

爬虫類の場合、大脳基底核と呼ばれるきわめて原始的な脳がほとんどを占めるが、下等な哺乳類になると、大脳基底核の上に古い皮質が加わるようになる。高等哺乳類にまで進化すると、さらに新皮質が発達してきて大脳基底核、古皮質を包み込むように大きくなる。

カサの小さなキノコのように見える大脳辺縁系が、爬虫類脳や下等哺乳類にまで進化すると、さらに新皮質が発達してきて大脳基底核、古皮質を包み込むように大きくなる。

カサの小さなキノコののように見える大脳辺縁系が、爬虫類脳や下等哺乳類脳に起源をもつ部分なのだ。ここは、胎児の発達を見ても、新皮質より完成されるのが早い。

構造として、より古いものであることがうかがわれる。

ここは食品や性欲といった本能、快不快や恐怖、怒りといった基本的な情動を司っており、さらにホルモン分泌、自立神経や内臓の働きにも関係している。動物として生きていくのに必要な機能を担っているのだ。

この大脳辺縁系の外側に、大きなベレー帽のような新皮質がある。人間特有の複雑な思考や行動をコントロールしている部分である。

つまり、生物は古い脳を改良したり捨てられたりしたのではなく、必要な新しい脳を古い脳の上にどんどんつけ加えながら、進化の道を歩んできたのだ。そして脳をもっとも大きく発達させたのが、私たち人類というわけである。

これでは「言葉は多いが知恵は少ない」人間になる

起源の古い大脳辺縁系は原始的で野蛮な脳であり、高度な頭脳をもつ人間にとって大した役には立っていない、重要なのは新皮質であり大脳辺縁系は少ない、などと考えるのは間違いである。

脳の働きを前後左右から見てきたが、どの部分も単独で機能しているわけではない。いずれの部分も独自の働きを受けもちながら、前後左右で情報のやりとりをしている。

五感を通して入ってきた刺激が脳内をかけめぐり、瞬時に処理されて、行動となってあらわれるのだ。どんな行動をするときにも、脳全体が働いている。

内側と外側の関係も同様だ。ここでコントロールされているのは、人間の知・情・意である。ある刺激に対して、まず反応するのは「情」の部分だ。

見たり聞いたり触れたりしたことによって、快不快、喜怒哀楽、恐怖といった感情が芽生える。それから動くのは。「意」の部分だ。不快感、恐怖感を与える刺激に対して、そこから回避しよう、ぶつかっていこうとする意志や意欲が生まれる。

一方、楽しいことや快感を与えてくれるものなら、もっと近づいてみよう、もう1度おなじ快感を味わいたいとなるだろう。

そして、具体的にどう行動するかを決定するのが「知」の部分である。過去の経験を思い出して、言動を改める。先のことを考えて、工夫を加えてみる。あるいは、周囲の状況を見て、ここはアクションを起こさないほうが賢明だという判断を下す。ここで、知恵とか知識と呼ばれるものが登場するのだ。

「情」の非常に多くは大脳辺縁系が司り、「知」のほとんどは大脳新皮質が受けもっている。「意」は両方働きがかかわっている。

こうして見ると、知・情・意は三位一体であることがよくわかる。感情が動き、意欲が生まれ、知識となるのだ。

いずれも人間の精神活動に欠かせない、精神活動に欠かせない、この三つ役割をバランスよく鍛えることが必要なのである。知識に偏った人ほど、情の部分をうまくコントロールできない傾向にあることは、私の専門である精神医学の現場から見ても間違いない。

つまり、感情が豊かで、やる気があり、知識も豊富な人間こそが、頭のいい人間といえるのである。

このキーを叩けば「賢さ」は倍加する!

「人は女に生まれない。女になるのだ」

こう言ったのは、フランスの作家シモーヌ・ド・ボーボワールである。女性は男性よりも劣ると考えられた男性優位の社会において、女性はどのように生きるべきかを追求した著書「第二の性」の中の有名な言葉である。だが、脳について語る場合は、ずいぶん事情が異なるようだ。

「人は男に生まれない。男性ホルモンを浴びることで、男になるのだ」

これが真相のようである。

  なぜ違ってくる?「男脳」と「女脳」

周知のとおり、人間は、性を決定するする性染色体がXXなら女、XYなら男に生まれる。Y染色体をもっていることが男の条件というわけだ。

だが、じつをいうと、染色体だけでは十分条件ではない。男性ホルモンが正常につくられ、必要な量が分泌されることが不可欠なのだ。加えて、細胞に男性ホルモンを受けとめる機能がきちんと備わっていることも必要である。男性ホルモンがつくられない、またはつくられても受けとめる機能がない場合には、男は男にならない。

これは、胎児に生殖器が形成される過程を見てもわかる。

受精後、子宮内で成長を始めた初期の胎児には、将来、男性器になる原型と女性器になる原型との両方が備わっている。ここで何も起こらなければ、男性器の原型はしだいに退化していき、なくなってしまう。女性器が発達して、やがて女の赤ん坊として生まれてくるのである。

一方、Y染色体をもち、男性ホルモンが分泌されると、男性器の退化消失が抑えられ女性器のほうが失われていく。こうして男の赤ん坊が誕生するのだ。

もちろん、男性ホルモンも女性ホルモンも女性ホルモンも、どちらも人体内に分泌される。男女ではその量のバランスが異なるのだが、男をつくるためには、充分必要な量の男性ホルモンの分泌が欠かせないのだ。このビッグイベントが起こらないかぎり、ヒトは女になるようにプログラムされているのである。

つまり、人は男に生まれない。放っておけば、体も脳も女になるのだ。

そして、このビッグイベントが起こるか否かは、脳にも大きく影響していることがわかってきた。

昨今注目されている男脳、女脳に深くかかわっているようなのだ。

    男は「左脳人間」になりやすい

では、男脳と女脳はどこが違うのだろうか。

まず、男性の場合、大脳辺縁系にある偏桃体の一部、視床下部の一部が、女性よりもかなり大きいことがわかっている。ここは攻撃性や性的欲求にかかわっている部分であるから、一般的に男性の方が攻撃的といわれる一因と考えていいだろう。

また、女性の場合は、左右の脳の大きさのバランスがとれており、右脳と左脳をつないでいる脳梁が大きく、情報がほどよく両脳を行き来している。しかし、男性の脳は左右の大きさがアンバランスで、左脳が大きい傾向にあるという。脳梁も、女性に比べると小さいようだ。

具体的にいうと、たとえば言語に関する能力が男性は左脳に偏っているが、女性は左脳とともに右脳も働かせているのであるこれは左右の脳の大きさのバランスに関係しているようなのだ。

男性の左脳が大きい要因は、言語能力のほとんどが左脳にゆだねられていることに由来するようだ。男性の方が女性より、、地図を見たり土地勘を得たりする空間認識能力にすぐれているのも、右脳と左脳がアンバランスであることと相関関係にあるとみられている。

男性、ある能力が傑出した専門化になりやすいといえよう。半面、脳に損傷を受けると、その部分が担っていた能力が失われて、回復が困難な場合もある。一方、多くの女性が男性よりも、おしゃべりが得意で大好きなのは、右脳、左脳を使って言語を操っているからと考えられるだろう。

一つの能力が脳の一部分に偏っていないため、脳の一部にダメージを受けても、他の部分がカバーしやすいようである。

さらに、大脳新皮質と大脳辺縁系との間で情報をやりとりする部分も、女性のほうが大きいことがわかっている。これは、女性特有のこまやかな情緒に関連している可能性が示唆されている。

もっとも、今述べたことは解剖学的な相違であって、神経細胞のシナプスでやりとりしている神経伝達物質の量や性質などにも違いがあるのかどうかは、まだ不明である。

もちろん、生まれ育った環境の影響や、個人差にも目を向けなければいけないだろう。

ただ、こうした男女の違いも把握したうえで能力アップを図っていけば、より効果的であるといえる。